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6月の行事

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早苗饗(さなぶり)

 早苗饗とは、田植え初めに田の神を迎える行事「早降(さおり)」に対するもので、田植えが終わって田の神を送る行事、または、そのときに行う飲食の行事のことをいいます。
 当日は、五目飯、炊き込み御飯、朴葉(ほおば)寿司などを作って、家族の者や田植えを手伝った人たちが、共に食べて、無事に田植えが終わったことを祝いました。
 田の神には、きれいに洗った早苗三把と神酒、五目飯や朴葉寿司などを供えて祭り、田植えが終了したことを感謝します。そして、巡り来る秋の豊かな実りを願って、山へ帰る田の神を送りました。苗を洗うとき、種籾(もみ)の殻が根についていると、夫婦げんかが絶えないという言い伝えもありました。
 苗代作りから田植えが終わるまでの農家の忙しさは、大変なものでした。一定の期間に作業を終わらなければなりません。裏作に麦を作ることが多かったので、この場合は、田植えの途中で麦刈りをし、脱穀しました。また、たんぼに馬鈴薯や玉葱を作ることもありこの場合もその収穫をしてから、馬や牛を使ってすき起こし、畦(あぜ)を塗りました。そして、厩肥などを入れて荒掻き、かい田、代掻きをしました。連日の重労働で、休む間もなく、田植えです。暗いうちに起きて苗を取り、「もやい」や「手間替え」の人たちと共に、腰の痛い田植えの作業が続きました。時期的には雨の季節ですから、雨の日の作業も多く、着る作業着が数日間濡れたままのこともありました。干す間がないのです。早苗饗はこのような辛い仕事の終わった日で、農家の束の間の息抜きの日でもありました。
 早苗饗という呼び方は、東北や関東に多く、四国や九州では「早昇(さのぼり)」といいます。北陸、山陰、山陽では「シロミテ」といわれています。
 早苗饗の行事は、家ごとに行うものと、村などで一定の日を決めて行う場合があるようですが、東白川村では、隣近所がおおむね同一の日に行うようにしてきました。
 早苗饗の行事を行う日は、6月下旬でした。しかし、現在は稲作の技術の進歩に伴い、田植えの終了が昔よりも1か月以上早くなり、しかも、他人に依頼して小さな苗を機械で植えることが多くなったため、早苗饗の行事が行われるのも少なくなりました。
 そういう中で東白川村神土西洞集落では土地基盤整備事業の完成により田の神を1か所に合祀し、早苗饗の行事を集落全体で行うこととしました。
 参考までに、早苗饗が終わった後、残った稲の苗はきれいに洗って乾燥し、神棚の飾り金具などを磨くことに用いました。磨き砂をつけて、それで擦(こす)ると真鍮(しんちゅう)や銅製のものが美しく光ります。

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