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菅原 唯斗さんの部屋 | 11月活動報告書

写真:岡公園(和歌山市)/紀州徳川家家老三浦家下屋敷跡にあった茶室『夜雨荘』外観

今月は、来年1月に名古屋で開催される写真展に向けて、本格的な打ち合わせと準備を進める大切な時期となりました。展示のテーマは「豊かさとは何か」。これは一見するととても身近で、誰もが日常の中で感じているはずの概念でありながら、現代社会に生きる私たちにとっては、案外とらえどころのない問いでもあります。だからこそ、今回の写真展を通じてその本質にあらためて向き合う機会を作りたいと考え、時間をかけて議論を重ねています。
現代は、かつてないほど情報や物があふれた社会です。スマートフォンを開けば膨大な情報が流れ込み、少し歩けば新しい商品やサービスが目に入ってきます。それらは便利で刺激的で、生活を豊かにする側面も確かにあります。しかしそれと同時に、そうした過剰な刺激に慣れてしまうことで、本当に大切にしたいものが日々の喧騒に埋もれ、見えづらくなっているのではないか。そんな感覚が、多くの人の心の奥に静かに積もっているように感じます。
今回の展示では、そうした「見えにくくなってしまった豊かさ」を、写真という表現を通してそっと照らし出すことを目指しています。豊かさとは、単に物がたくさんあることや、便利で効率の良い生活を送ることとは限りません。むしろ、ゆっくり呼吸を整えながら、日常の中に流れる光や影、家族や友人など身近な人との時間、自分の心が動いた小さな瞬間に目を向ける余白こそが、本当の豊かさを育んでいくのではないか。そんな想いを軸にしながら、展示の構成や作品選びについて話し合いを進めています。
打ち合わせの中では、一枚の写真が持つ物語性や、観る人の心にどのような「気付き」を届けられるかといった点を特に大切にしています。単に美しい写真を並べるだけではなく、写真が語りかける静かな感情や、そこに映し出された時間の厚みが来場者へとゆっくり伝わるような空間づくりを目指しています。また、展示を巡る動線や作品の配置、照明の強さや高さといった細かな要素も、来場者の心が自然に“問い”へと向かうよう意識しながら検討しています。
さらに、豊かさを考えるための「プロセス」も今回の重要な視点です。私たちは、何かに追われる日々の中で、つい立ち止まることを忘れてしまいがちです。しかし、写真展という静かな空間に身を置くことで、心の速度を落とし、自分自身が見失っていた価値に気付くきっかけが生まれるのではないか。その「気付きのプロセス」を支えるために、作品同士の関係性や展示の流れにも物語的な要素を持たせられるよう、緻密な準備を進めています。
今月はそうした思考と対話を重ねる期間となり、展示としての方向性が次第に輪郭を帯びてきました。まだ準備は続きますが、来場される方々が写真に向き合う時間を通じて、自分自身の中にある豊かさを再発見し、それを日々の生活にそっと持ち帰っていただけるような展示を作り上げたいと願っています。

プライベートとしては、個人の活動の方で和歌山県に行きました。
朝、出店前に街中を歩き回りましたら、古い道場や茶室など、古くから大切にされている建築物がたくさんあり、出逢うひとも穏やかな方ばかりで癒されました。
この写真は、岡公園の茶室を外から。
どこに行っても、自分が気になる物は簡素なもので、削ぎ落とされたものに惹かれるのだと感じました。
日々、自分が惹かれるものやことに心を傾けて進んで行けたらと思いました。

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